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「福袋/角田光代」 [書籍]


福袋 (河出文庫)

福袋 (河出文庫)

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/12/04
  • メディア: 文庫


私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…見知らぬ客から段ボール箱を預ったバイト店員。はたしてその中身とは?家を出ていった夫の同窓会に、代理出席した離婚間近の妻。そこで知った夫の過去とは!?自分の心や人生の“ブラックボックス”を思わず開けてしまった人々を描く、八つの連作小説集。(「BOOK」データベースより)

福袋というタイトルをみて、いったいどういう話なのかと思ったのだけど、
短編集のなかの一文を引用します。

「ひょっとしたら私たちはだれも、福袋を持たされてこの世に出てくるのではないか。福袋には、生まれおちて以降味わうことになるすべてが入っている。希望も絶望も、よろこびも苦悩も、笑い声もおさえた泣き声も、愛する気持ちも憎む気持ちもぜんぶ入っている。(中略)ほかの袋を選べばよかったと思ったりもする。それなのに私たちは袋の中身を捨てることができない。いじいじと身につけて、なんとか折り合いをつけて、それらが肌になじむころには、どのようにしてそれを手にしたのだか忘れてしまっている。」

ああーーー。
すごい本質を突いているなあ・・・としみじみ思った。

特に今、私は転職をしてすぐであり、不満もたくさんあるのだけど
これって人生が福袋だと思うと、中身の一つの出来事なんだなと思ったりする。

何もかもいいものしか入っていない人なんて人もいなく、使えない悪いもの
だらけというなんて人もいないんだろう。
生まれ持ってきた福袋の中身で一喜一憂したりしてるのが、私たちの
人生なのかな。

カリソメという短編も面白かった。
家を出て行った夫の同窓会に妻が出席するという話なのだけど、なぜ妻は
夫に友達も紹介されなければ結婚式もしないし、親にも会わせてもらえないので
あろうかと思っていたことが同窓会で分かったという。

それは、夫が「今の自分は自分でない、仮の姿である」と思っているから。
東大に入るつもりだったのにランク下と夫が思うバカ大学に入ってしまったから
来年は東大に入る、と同級生に豪語していたそうで。

でも結局4年通って卒業したのだけど、同級生には「あいつは仮なんだよな」
って思われてるのがなんともさみしいというか、でも気持ちが分からんでもないというか・・・

私も今の会社では絶対に口には出さないけど「今の自分は自分でない」と
少々思っているフシがあり、絶対いつかまた上場企業に入ってやると
考えていたり、、、

まあでも、題名の通り「カリソメ」なんだろうなあとちょっとハっとした小説でした。
この本は全編通して面白かったなー。
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