「人のセックスを笑うな/山崎 ナオコーラ」 [書籍]
19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた…美術専門学校の講師・ユリと過ごした日々を、みずみずしく描く、せつなさ100%の恋愛小説。「思わず嫉妬したくなる程の才能」など、選考委員に絶賛された第41回文藝賞受賞作/芥川賞候補作。短篇「虫歯と優しさ」を併録。
(「BOOK」データベースより)
本のタイトルにぎょっとしたのですが、鳩間の宿に置いてあったので
読んでみました。芥川賞の候補までいったんか。
内容的には「オレ」からみた恋愛小説。
作者の言いたかったことはなんなのだろう。
たぶん、この小説の中で明確な「言いたかったこと」と
いうのはなくて、最後に書いてあった男の未練みたいな
ことなのかなあ、ってでもまだ19歳じゃん。
芥川賞になる物語って、日常の淡々としたことを切り取った
話が多いような気がするんだけど(それをさらっと書くのが
難しいのかもしれないが)、仮にこういうカップルがいたとして、
その恋愛を書いたものがこの話な訳であって。。。
うまく言えませんが、日常の恋愛のはなしをさらっと
読みましたーーーという感じでした。
まあ、途中途中で「あー、わかる」ってのがあったかなくらいな。
タイトルほど過激な内容ではございません(笑)
「ちょいな人々/荻原 浩」 [書籍]
社内女性のほめ言葉に有頂天になる中年課長はじめ、おっちょこちょいだけど愛すべき人たちの破天荒なユーモアワールド。(「BOOK」データベースより)
久しぶりにこの人の本を読んだ。
ちょいな人々ってのは、あとちょいの「ちょい」かもだし、
おっちょこちょいの「ちょい」かもしれなくて、どこにでもいるで
あろうなひとのお話の短編集。
個人的におもしろかったのは「正直メール」という話で、
声でメールが打てる機種が発明され、その会社の
家族まで強制的にモニターとして使わされるのだけど、
声で文章を「書いて」いるとき、そのときの微妙な感情まで
読み取って書いてしまうので、結果人間関係のトラブルが
起きてしまうという。
結局大事なことはメールじゃなくて実際に話せばいいじゃんって
ことなんだけど、これって現実世界、きっと携帯を開発するうえで
何度も考えることなんだろうなあと思いました。
だから絵文字とか発達したんだろうし。
それはさておき、わたしもちょいな人々のひとりであるのは
間違いない訳であり(^^;;
久々におもしろい本でした。
「あやまち/沢村 凜」 [書籍]
帰宅途中の電車のなかで偶然気づいたひそやかな追跡劇。その尾行者が、ようやく幸せをつかんだかに見えたわたしにつきまとうようになる。地下鉄の駅の階段を歩いてのぼる者同士として意識するようになり結ばれた恋人。彼はこの尾行者と何かつながりがあるのか…。切なさが胸に迫る長編恋愛ミステリー。
(「BOOK」データベースより)
金曜の女子会で「男女の出会い方」として話した本。
小説なので「んなこたあない」なんだけど、ぜひ飴をばらまいてくれ(笑)
それはさておき実はこの本、結構前に買ったのだけど、
最初の地下鉄の駅の階段の描写とか、もろもろまどろっこしく
話がなかなか始まらないので途中で読むのをやめて
しまっていたのでした。
2度目はなぜかすぐ読めたんですけどね。
そのときの気分や体調で合ったり合わなかったりってあるのかな。
「あやまち」って題名、なにごと?と思わせるようなものでしたが、
ラストでそういうことかーと納得しました。
ハッピーエンドで終わる話ではなかったのですが、
お互い好きなのにこれで恋も終わることがあるのだなあと思い、
その後二人はどういう風に気持ちを切り替えたのか気になります。
「好かれようとしない/朝倉かすみ」 [書籍]
デートの経験もある。男と寝たこともある、一度きりだけど。二十五歳の二宮風吹は「必死」が苦手。恋に飢えた顔を晒すぐらいなら地味で結構。そんな私が一目惚れするなんて。鍵屋の若旦那を想う気怠く、もどかしい日々。攻め手が分からない。そんなときアパートの大家が言った―「好かれようとしないことよ」。
(「BOOK」データベースより)
題名を見て、指南書みたいだなーと思いましたが、恋愛小説で
好かれようとしないってどういうことなのかなと買ってみたのでした。
結局は媚を売るのではなく、自分が思ったことを素直に表現したり、
行動を起こしたりしていくうちに、鍵屋も主人公に惹かれていく
わけなのだけど。。
鍵屋がなんで最後に主人公を恋愛の対象にしたのかの気持ちの
変化がよく分からんかったなー。
というか、鍵屋がどんな性格の人なのかってのがよく分からなくて
読むのに苦労しました。
でも20代の途中で、恋愛をしている人が読んだら
「そうそうそう!わかるわかる!」
と思って読めるのかもです。
って作者は50歳の方なんだ・・・
20代にむけてのメッセージみたいなものなのかな。
「風に舞いあがるビニールシート/森 絵都」 [書籍]
愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。
(「BOOK」データベースより)
この作者で最初に読んだのが「カラフル」で、なんというかオチを
予測できてしまってつまらなかった、と前に記事にしたことが
あったのですが、この本は本当に同じ人が書いたの?!と
思うくらい読み応えがありました。
特に好きだったお話は「ジェネレーションX」。
取引先の若い営業マンが営業車で移動中、ずっと何人もの友だちに
必死に電話で「来い」と食い下がって何かをしようとしている。。。
というものだったのですが、ここでネタバレしますが、元野球部の
メンバーが10年に1回は必ず集まって試合をしようと学生時代に
決めていたとのことで、それを実現させるために彼は奔走して
いたのでした。
しかし、10年も経てばそれぞれの仕事や家族構成など
ライフワークが当然変わっていく訳で、でもそうなったとしても
「10年にたった1日、みんなで草野球ができないような人生は
まっぴらごめんだ。野球になにもかも投げ出すようなバカさ
加減だけはキープしておきたい」
とみんなで話していたのだそうで、その気持ちっていくつに
なっても大事だよなーと思ったりしました。
たとえば上記のような話を聞いて、よく、謙遜で
「やってみたいけどわたしにはそれは無理」
とおっしゃる方もいますが、やっぱり、無理と決めつけてしまう前に
「やってみる努力」をした方がいいのではと思います。
自分で可能性を潰してしまうのは本当にもったいない。
やってみてやっぱりそれほど興味がないかもと思えば
辞めればいいだけの話。
わたしもあとどのくらい、やりたいことができる時間が
あるのか分からないけど、このお話の彼みたいに
「何かに対して何もかも投げ出すようなバカさ加減」は
忘れずにいたいなーと思いました。
「恋する日本語/小山薫堂」 [書籍]
「あえか」「紐帯」「那由他」「玉響」…耳にしたことはあるけれど、意味がよくわからない日本語。たとえば、「赤心」とは「偽りのない心」のこと。「一曲」とは「ちょっとすねる」こと。言葉の意味をひもといてみると、そこには恋人たちの何気ない日常の瞬間が溢れている。日本語の美しい響きと甘く切ない恋心が堪能できる35のショートストーリー。
(「BOOK」データベースより)
知らない日本語がたくさん。
でも、その知らない単語の意味がわかる、恋のお話35話であります。
特にいいなあと思ったのが
「涵養」(水がしみこむように、少しずつ養い育てること。)のお話。
一度に持ちきれないほどの
花束をくれる人よりも、
一本の花を毎日くれる人のほうがいい。
恋は積み重ねたほうが頑丈だから。
いいねぇ。
そうだよなあ。
恋だけじゃなくとも、人間関係もそうだよなあ。
あと、「転た(うたた)」のお話もイイ。
(前略)
「うたた寝の"うたた"って何だろう?」
"うたた"の意味が
どうしても知りたくなった私たちは、
公園デートを中止して、
本屋さんに駆け込んだ。
日常の何でもない時間を
楽しくしてくれる彼を、
私はますます好きになった。
あー、こんな人いたらいいな~。
わかるわかる、みたいな。
でも、なんかこの本は女性目線なのからか??
「~してくれる」という表現が多いような気がしました。
自分は「~してあげる」ひとになりたいやねぇ。
ところで「転た」の意味とは。
ぜひ買って全編読んでみてください。
「さよなら、そしてこんにちは/荻原浩」 [書籍]
世のため、人のため、そして家族のため、働き者の悲哀を描く、著者独壇場の傑作集。
(「BOOK」データベースより)
どこにでもいる、そして自分もその主人公になりうるであろう
日常の7つの物語が入っています。
みんな生きていくのに必死、というか、涼しい顔をしていても
水に浮かぶ鳥のように、見えないところで足をバタつかせているのだ。
ニコっと笑えるハッピーエンドもあれば、そうでない、
ちょっとだけ思惑と外れてしまうエンディングも
あったりするのですが、まさにそれって人生そのもの
だよなあと思いました。
世の中の大多数、もう99%以上は平々凡々な人な
わけなんだけど、隣の芝生は青く見えるのだ。
それを羨ましく感じ、自分もあやかろうとする。
かといってじゃあその芝生を手に入れたとして・・・
その手に入れた芝生は自分にとって心地のよいものなのか?
そうじゃないんじゃないか?という気がしました。
「こっちへお入り/平安寿子」 [書籍]
吉田江利、三十三歳独身OL。ちょっと荒んだアラサー女の心を癒してくれたのは往年の噺家たちだった。ひょんなことから始めた素人落語にどんどんのめり込んでいく江利。忘れかけていた他者への優しさや、何かに夢中になる情熱を徐々に取り戻していく。落語は人間の本質を描くゆえに奥深い。まさに人生の指南書だ!涙と笑いで贈る、遅れてやってきた青春の落語成長物語。
(「BOOK」データベースより)
なんか今年から落語がいいなーと思っていた矢先に見つけた本。
やっぱそうだよなあと、そして親切に解説も入っております。
「思い通りに行く人生なんて、ない。誰もが、自分のバカさ加減に
泣かされるんです。その繰り返しが人生じゃないですか。
だから、噺の世界ではバカが立役者なんです。バカな考え、
バカな行い、それゆえの泣き笑い。
それがね、小よしさん(主人公の江利の落語をやるなかでの名)
僕らがやっている落語ってものなんですよ」
うーむ。なんか深いなあって思いました。
本当に、私は過去にバカばかりしてきてしまったので
一切戻りたいなんて考えたことがないのですが、
やっぱりその繰り返しなんだよねえ・・・
今仕事で悩んでいるのもそう。
ピアノをはじめようと思っているのもそう。
英語をまたがんばろうと思っているのもそう。
いまいる状況に対して100%満足なんてことって
そうそうないのですわ。
たぶん、いまが過去になったときもバカやってんだろうなあと
いう気がするのですが、それでもいいかなって思います。
ずっとバカが立役者でいいじゃんね。
「きみの友だち/重松清」 [書籍]
わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる―。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない…。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
(「BOOK」データベースより)
またいい本に出会えたなー。
小学校高学年から中学時代って、いちばん友だちについて
悩んだ時期だったなと思い。
恵美ちゃんはそんな中、ちゃんと「友だち」というのは何かと
いう答えを知っている子なんだと思う。
文中で、病気がちで休んでいる由香ちゃんについてクラスメイトに
「友だちになるときって・・・その子とずーっと一緒にいたいから、
だから、友だちになるんじゃないの?そういう子のことを友だちって
いうんじゃないの?それが親友なんじゃないの?」
と問われるシーンがあるのだけど、
「わたしは、一緒にいなくても寂しくない相手のこと、
友だちっておもうけど。」
と恵美ちゃんはさらりと答えられる。
本当にそうだよなって思う。
中学時代はひとりでトイレにいくのもなんだか恥ずかしくて、
常にだれかと一緒にいないと周りの「みんな」から変に
思われるんじゃないだろうか?と不安になったりしてたもんなあ。
「一緒にいるから友だち」じゃあないんだよね。
その証拠に、中学時代の人とは数人と年賀状をやり取りする
くらいで、いまだにお付き合いしてるという人はおりません。。。
現代っ子はケータイの返事がすぐにこないと不安になるとかで
片時も手放さないとか話を聞くけど、なんか空しいよなあって
思うのだ。
それは友だちじゃなくて義務感で付き合ってる人でしかないかなと。
友だちは、しばらく連絡を取らなかったり合わなかったとしても
いなくなってしまうものではなく、久々に会えばまたすぐにその
会わなかった時間を埋められる存在なんじゃないかなと思います。
なんか中学時代を思い出してしまった。
遠い昔の話なんだけどな。
「福袋/角田光代」 [書籍]
私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…見知らぬ客から段ボール箱を預ったバイト店員。はたしてその中身とは?家を出ていった夫の同窓会に、代理出席した離婚間近の妻。そこで知った夫の過去とは!?自分の心や人生の“ブラックボックス”を思わず開けてしまった人々を描く、八つの連作小説集。(「BOOK」データベースより)
福袋というタイトルをみて、いったいどういう話なのかと思ったのだけど、
短編集のなかの一文を引用します。
「ひょっとしたら私たちはだれも、福袋を持たされてこの世に出てくるのではないか。福袋には、生まれおちて以降味わうことになるすべてが入っている。希望も絶望も、よろこびも苦悩も、笑い声もおさえた泣き声も、愛する気持ちも憎む気持ちもぜんぶ入っている。(中略)ほかの袋を選べばよかったと思ったりもする。それなのに私たちは袋の中身を捨てることができない。いじいじと身につけて、なんとか折り合いをつけて、それらが肌になじむころには、どのようにしてそれを手にしたのだか忘れてしまっている。」
ああーーー。
すごい本質を突いているなあ・・・としみじみ思った。
特に今、私は転職をしてすぐであり、不満もたくさんあるのだけど
これって人生が福袋だと思うと、中身の一つの出来事なんだなと思ったりする。
何もかもいいものしか入っていない人なんて人もいなく、使えない悪いもの
だらけというなんて人もいないんだろう。
生まれ持ってきた福袋の中身で一喜一憂したりしてるのが、私たちの
人生なのかな。
カリソメという短編も面白かった。
家を出て行った夫の同窓会に妻が出席するという話なのだけど、なぜ妻は
夫に友達も紹介されなければ結婚式もしないし、親にも会わせてもらえないので
あろうかと思っていたことが同窓会で分かったという。
それは、夫が「今の自分は自分でない、仮の姿である」と思っているから。
東大に入るつもりだったのにランク下と夫が思うバカ大学に入ってしまったから
来年は東大に入る、と同級生に豪語していたそうで。
でも結局4年通って卒業したのだけど、同級生には「あいつは仮なんだよな」
って思われてるのがなんともさみしいというか、でも気持ちが分からんでもないというか・・・
私も今の会社では絶対に口には出さないけど「今の自分は自分でない」と
少々思っているフシがあり、絶対いつかまた上場企業に入ってやると
考えていたり、、、
まあでも、題名の通り「カリソメ」なんだろうなあとちょっとハっとした小説でした。
この本は全編通して面白かったなー。